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デジタルツイン:電力網の安定性と信頼性の確保

HIL(Hardware in the Loop)と‘Digital Twin’

シミュレーション技術は、コンピュータ技術と同じように進化してきました。電力システム技術とともにシミュレーションツールの進化も常に必要とされてきました。 以下の図はタイムライン上で、シミュレーションツールの進化と目的を表したものです。
EMT(電磁界過渡現象)オフラインシミュレーションは 高速過渡現象解析での解析に用いられてきており、昨今ではこれらは複雑な制御システムの研究に多く使われています。

リアルタイムEMTシミュレーションは、複雑な制御や保護システム、FACTSやHVDC制御のHIL試験などに用いられています。
昨今、フェーザシミュレーションは、動的なセキュリティ評価と計画の研究に広く使用されています。
しかし、フェーザシミュレーションは、グリッドが従来からある大部分の回転発電機が大きな慣性を持っていることを想定しており、正相シミュレーションツールの場合、システムが完全に平衡状態であることを前提としています。
この仮定は、電力システムの安定性を評価する際、インバータベース電源の使用率が高い場合には適用できない可能性があります。
その為、グリッドセキュリティを分析する新しい方法を導入する必要があり、デジタルツインはそのソリューションのひとつとなり得ます。

近年の電力システムでは、高速またはローカルな制御システムと、保護システム間の相互作用や、複雑な通信システムを介した広域制御、および保護システムとの調整が増えています。
送電レベルでは、集中型発電所内により多くのインバータベースの電源が存在し、配電システム全体にも広がっています。
これらのリソースは結果としてイナーシャを減少させ、接続される各リソースの反応時間も短縮されます。
また、それらはシステムの他部門と相互に作用するため、高速制御や保護機能を必要としており、安定性に深刻な影響を与える可能性があります。

デジタルツインは、現代の複雑な電力システムの動作をより深く理解し、予測するためのシステム仮想表現です。


デジタルツインをリアルタイムの適応性、可観測性、予測可能性の3つの主要なカテゴリに沿って説明します。

適応性は、デジタルツインが同期されて系統に接続される、ということを意味しています。
リアルタイムまたは、ほぼリアルタイムで、現在の運用状態に適応でき、パラメータ推定方法に基づいて内部モデルが調整される必要があります。

可観測性は、実システムのデジタルモデルがあると、すべてのシステム状態をより適切に評価できるということです。
モニタリングに比べ、より高いサンプリングレートで監視でき、通信インフラの渋滞と遅延の制限が少なくなり詳細に分析ができます。

予測可能性は、重大な潜在的障害シナリオを継続的に評価し、システムの崩壊を防ぐのに役立てられます。実際の動作条件に基づいて、複数のシナリオを同時に評価することもできます。



これらの属性を備えた、電力システムデジタルツインの例を次に示します。

電力システムに同期して接続され、変化する条件に適応してパラメータ調整が可能なため、リアルタイム適応性があります。
リアルタイムシミュレーションや、クラウド、高性能コンピュータによるリアルタイムより更に高速なシミュレーションで、可観測性と予測可能性が保証されます。

デジタルツインは、意思決定に役立つ複数のシナリオ評価を通じて、オペレータにデータを提供します。
これは、詳細なEMTモデルを使用するデジタルツインでは実現が難しいように思われるかもしれません。

しかし、この概念を実装するための処理およびシミュレーション技術が昨今では利用可能になっています。

一方で、モデルの忠実度は依然として非常に重要な課題です。
一部では、OEMからのデータ量が制限されています。
フェーザドメインで汎用モデルを使用することが多く、NERC (the North american Electric Reliability Corporation)などの信頼性評議会はオンサイトテストによるモデル検証が必要とするルールを決めています。

これらのルールにより、従来の発電機モデルによる動的評価が大幅に改善されました。
しかし、フェーザモードで提案された汎用モデルは、インバータベースの電源等に関しては、必ずしもパワーエレクトロニクスの制御と保護を適切に表すとは限りません。

場合によっては、メーカーは実際のコントローラコードを使用した、ブラックボックスモデルを提供するように要求されます。
しかし、これらのモデルはシミュレーションツール間で相互運用できません。
OEMモデルに関する新しいルールや、系統のセキュリティ評価に使用できる、相互運用可能なモデルの新しい規格の採用について提案する必要があるかもしれません。
さらに、これらのモデルには、異なるパラメータセットを備えたさまざまなバージョンがあり得ます。

しかしながら、モデル設定が常に発電所の設定と完全に同じであるという保証は実際にはありません。

同じ会社内でも、システム研究に関わる部門が異なって存在する可能性もあり、その場合は適切なコンテキストで同じモデルを使用する必要があります。
その為、会社内での集中型モデルデータベースの使用を検討する必要がありそうです。


もう一つの重要な課題は、セキュリティ評価に関わる現在のシミュレーション手法への懸念です。
フェーザシミュレーションだけではインバータベースの電源の比率が高いシステムのシミュレーションには大きな制限があり、EMTが注目を集めています。
したがって、EMTシミュレーション、またはフェーザとEMTシミュレーションの組み合わせへの変更を検討することが重要です。
また、両方のシミュレーションドメインを可能にするリアルタイムシミュレーションテクノロジーを使用することは有望なソリューションとなり得ます。

以下に示した、テストカバレッジと不測事態分析に関連する課題もあります。


数百、数千のシナリオシミュレーションの場合(特にそこにEMTシミュレーションがある場合)、高性能PCとクラウドコンピューティングは、並列シミュレーションの実行に役立ちます。
しかしながら、シナリオをインテリジェンスに選択できない場合、テストの実行速度と利用可能なコンピューティングリソース間で、妥協点の検討を行う必要があります。
その為、シミュレーションの実行を最適化し、最も重大なケースを特定するためには、人工知能(AI)を検討し始める必要があります。


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