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グリッド フォローイング インバータ RCP

原文著:Shu WANG (imperix) 2025.12.31 TN167

Grid-Following Inverterとは何か?

系統追従型インバータ(Grid-Following Inverter:GFLI)と系統形成型インバータ(Grid-Forming Inverter:GFMI)は、系統連系インバータの2つの基本的な分類です。

本質的に、系統追従型インバータは電流源として動作し、系統の電圧および周波数に同期しながら、出力電流を制御することで有効電力や無効電力を注入または吸収します。
これに対して、系統形成型インバータは電圧源として動作し、系統の電圧振幅および周波数を自ら設定します。これは「Grid-Forming Inverter」で紹介されているとおりです。

構成がシンプルで比較的低コストであるという利点から、系統追従型インバータは、再生可能エネルギー発電、エネルギー貯蔵、電気自動車(EV)充電などの系統連系用途で広く使用されています。
系統形成型インバータと比べて、系統追従型インバータは電力制御および応答をより高速に行えるほか、並列運転するインバータ間の同期といった技術的課題を回避できるという特長があります。

系統追従型インバータの制御

系統追従型インバータの制御目的は、通常、系統への有効電力および無効電力の注入量を制御することです。
系統電圧に同期した回転座標系(dq座標系)において、有効電力と無効電力は次のように表されます:
系統電圧の振幅 𝑉𝑔,𝑑 が一定であれば、有効電力および無効電力の制御は、dq座標系における系統電流の制御によって簡略化できます。
また、電流制御ループに加えて、交流系統との同期やPWM出力の適切な有効化といった追加機能も必要となります。これらは、以下に示す制御ブロック図に示されているとおりです。

系統追従型インバータの制御ブロック図(例)

系統同期

系統の位相および周波数を追従するためには、高精度な同期システムが必要です。

本技術ノートでは、三相系統との同期においてシンプルで広く用いられている手法である SRF-PLL を例として使用しています。
別の手法として SOGI-PLL も紹介されており、こちらはより優れた動特性を有し、単相系統にも対応可能である一方、実装がより複雑になるという特徴があります。

系統電流制御

本技術ノートでは、回転座標系(dq座標系)における電流指令値 𝐼𝑔,および 𝐼𝑔,𝑞を用いて、有効電力および無効電力の潮流を直接制御します。
系統電流の各成分は、「ベクトル電流制御(Vector Current Control)」で紹介されている手法と同様に、系統同期座標系(dq座標系)上の2つのPIコントローラによって制御されます。

電流制御器のプラントモデルには、TPI 8032 の多段フィルタ構成などに起因して複数の項が含まれます。
しかし、電流制御器の調整(チューニング)を目的とする場合、このプラントモデルは、アクチュエータを表す一次遅れと単一のインダクタに簡略化できます。
その結果、得られるプラントの伝達関数は次のようになります:
制御パラメータ K(p,I)および K(i,I)は、例えば、上記のプラントモデルと、 TPI 8032 のデータシートから取得した Lgおよび Rgのパラメータを考慮し、 振幅最適(Magnitude Optimum:MO)基準を用いてチューニングすることができます。
パラメータ Tdは、演算遅延や変調遅延など、システム内に存在するすべての小さな遅延の総和を表します。

「Time delay determination for closed-loop control」というプロダクトノートでは、システム全体の遅延をどのように求めるかが説明されています。
本例では、サイクル遅延が制御周期の半分未満(Tcy<0.5Ts)であり、PWM変調には三角波キャリアが使用されています。
この条件のもとで、全遅延 Tdは次のように算出されます:

・検出(センシング)遅延:無視(約 500 ns)
・制御遅延:T(d,ctrl)=0.5 Ts
・変調遅延:T(d,PWM)=0.5 Tsw
・スイッチング遅延:無視(サブマイクロ秒オーダー)

また、同期平均(synchronous averaging)が有効になっている場合(TPI の ADC ブロックではこれがデフォルト設定です)、 スイッチング周期1周期にわたって測定値を平均化するため、追加で 0.5 Tswの遅延を考慮する必要があります。

Ts=Tswとすると、全遅延は次のようになります:

PWMの有効化

PWM 出力は、次の条件がすべて満たされた場合にのみ有効化されます。
• PLL が系統と同期していること
• リレーが投入され、動作可能な状態にあること
• ユーザが可変パラメータ activate を「1」に設定していること

TPI 8032 による実装

系統追従型インバータの制御は Simulink 上で実装されています。

Grid-Following Inverter control implementation in Simulink

実験時の最小テスト環境

• Imperix ACG SDK 2024.2 以降 • MATLAB Simulink R2016a 以降 • Plexim PLECS 4.5 以降 • シミュレーションのみの場合:Simscape Electrical

実験結果

本実験は、DC 電源および交流系統に接続された TPI 8032 を用いて実施されました。

系統追従型インバータの実験用配線構成

系統追従型インバータの実験セットアップ

動作条件

実験結果を以下に示します。d 軸および q 軸の電流指令値にステップ変化を与えた際の結果であり、試験全体を通して電流指令がコントローラによって高速に追従されていることが確認できます。

さらに、このコントローラは d 軸電流と q 軸電流のデカップリング性能にも優れています。
一方の軸に電流ステップを与えても、他方の軸の電流には影響が現れないことが確認できます。
コントローラの時間領域における性能は、d 軸または q 軸のいずれか一方のステップ応答を詳しく確認することで、さらに検証できます。
次の図に示すように、整定時間は約 200 µsであり、オーバーシュートのない高速な応答特性を示しています。
関連資料