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デジタルツインは未だ夢なのか?

Jean Belanger

デジタルツインはもはや夢ではなく、ここ数年で達成できる可能性があります。
電力システムデジタルツインとして リアルタイムシミュレータに要求される機能を述べたいと思います。

デジタルツインは未だ夢なのか? OPAL-RTのCEO Jean Belanger氏によるプレゼン (日本語字幕つき)

オペレータを支援する場合は、5~10分ごとにネットワークの情報を提供する必要があり、これは大きな課題です。
また(実際のシステム状態に)自己適応しなければならず、同時にパラメータが正しいことを確認しなければなりません。
さらに、電力システムと同期して充分な精度が必要です。

場合によっては、完全なEMT不平衡シミュレーションを行う必要があり、Phasorの使用や、IDR(分散電源系統連携)の追加も必要です。その場合はEMTシミュレーションを使わざるを得ません。また、精度を高めるために、汎用および 製品コードによる制御システムをサポートする必要があります。

以下に記すことが、正確なデジタルツイン実装を妨げており、我々が持っている大きな課題です。

パワーグリッドデジタルツインが求められる主な機能

  • グリッドの動作と、障害発生時に平常に戻る機能を予測することで、システムオペレーターをリアルタイム(たとえば5?10分ごと)支援
  • 実際のシステム状態と動作条件に自動適応
  • 正確であること
    • 必要に応じて、Phaserベースまたは完全なEMT不平衡シミュレーションを使用
    • 過去のイベントから自動検証
    • グリッドの正確な仮想表現で、不測事態におけるグリッドの動作を理解
    • ローカルと分散制御、保護、通信遅延の影響など、すべてのコンポーネントの正確な動的モデルが含まれる
  • 精度向上の為、汎用および製品コードでの制御システムをサポート


さらに、デジタルツインは制御以外でも有効
  • what-ifシナリオ分析に於ける、システム相互接続やDER統合の調査・設計・計画ツール
  • グリッドの問題を回避するため、HILを使用して制御システムのテストおよび調整
  • イベント後の詳細分析用
DER(Distributed Energy Resource:分散型エネルギー源

過去15年間で取り組んで来たのは、EMTシミュレーションを使うときの速度と、どう向き合うかということです。
従来のシステムでは、制御室や計画ツールでは、主にPhasorタイプのシミュレーションツールを使用していました。
これらは処理が高速だったため、必要なコンピューティングリソースは少なくて済みました。

完全なEMTシミュレーションを行ったり、何度も繰り返したり、10-100μsec時間ステップでシミュレートする場合、同じシミュレーションを実行するためのタイムステップは、Phasorタイプの1000倍から3000倍以上になります。
状態をシミュレートするのに2、3時間かかると、多くのテストや、オペレータをヘルプすることは難しくなります。
従来の汎用EMTシミュレーションツールを使用すると、10-20秒の(シミュレーションに)何時間もかかります。

以下のスライドは、このタイプのシミュレーションを如何に高速化するかに関わるものです。

速度の課題

システムオペレータは、約5~10分ごとにシステム全体の安定性を確認する必要がある
  • 実際のコントロールセンターは、従来の電力潮流とPhasorタイプの過渡動的安定性ツールを使用してこの課題に対応し、数千の不測事態と電力潮流のシナリオを考慮しながら、障害後にシステムを安定した状態に戻す
  • ・・しかし、大量のパワエレシステムが統合された電力グリッドの正確な動的シミュレーションには、10?100μsecの時間ステップと、詳細なEMTモデルが必要
  • ・・しかしながら、システムの安定性を評価するためには、10?20秒間のEMTシミュレーションが必要で、代表的なEMTシミュレーションツールを使用すると数時間かかる
  • Phasorベースツールの典型的な時間ステップは大体20msecくらい
  • グリッドの規模や複雑さにもよるが ほとんどの場合非常事態の解析には10msecで終わらないといけない
  • いくつかの不測事態事前シミュレーションは従来型のグリッドでも可能
  • EMTシミュレーションは単純なPhasorシミュレーションより1000倍時間がかかる
  • 最新低慣性グリッドでは、事前シミュレーションが有効でない場合がある

システム安定性をオンラインで正確に分析するには、シミュレーションの高速化が必要


我々は過去10年間で、非常に大規模なクラスターの実装に成功しました。
WindowsやLinuxで動作する、市販の標準的なコンピュータを使用し、実装を利用可能なスーパーコンピューター、クラウドベース、社内サーバーにすることです。現在の主な構成は、メイングリッドシミュレーターを使用し、 メモリを共有して、多数の高速プロセッサを統合することが効率的と考えています。

IDR(分散電源系統連携)モデルが含まれる、プラントモデルと接続した実際の電力システムが、個々のPCまたはプロセッサでシミュレートでき、すべてがグリッドに接続しています。
同じことが保護制御や通信システムでも出来ます。
通信は、今後大きな役割をするようになります。 
このような考え方をベースにして、実際の電力システム構造を複製し、EMTシミュレーションに移行することで、リアルな世界を体現することが出来ます。

送電網の遅延対策として光(通信)速度対応が出来ます。個々のプロセッサで、ネットワークサブシステムの各部分をシミュレートできます。
各々のプラントを接続するステーションは、単一のプロセッサコアでシミュレートでき、それらは送電網で相互接続されています。
このようにして、シミュレートしたい対象に応じてシミュレータの機能を拡張できます。この場合、グリッドが非常に大きくなれば、プロセッサーを追加するだけで済みます。


我々は過去6か月の間、これらインターフェースを使った高速Co-Simをデモしました。
サプライヤーから供給された32ビットPSCADの DLL制御モデルは、64bitのLinuxかWindowsシミュレータとインターフェースする必要があります。
これは任意のインタ-フェイスと接続できることを意味します。
時には、WindowsDLLをLinuxとインターフェースする必要もあります。
様々なソリューションとのインターフェースが可能な、高速Co-Simが必要です。

次に、マルチレートシミュレーションのサポートが必要です。
これは、内挿/外挿対応の必要があるということです。
OEMでコントローラ設計に使われるレートは、実際には必ずしもメインシミュレーションレートと同じではなく、同じシステムに対して、異なるコントローラが接続されることがあります。
それぞれ固有のレートを持っており、これらすべての制御と保護に対して、それぞれ固有のレートでインターフェースする必要があります。
これは実際の電力システムでも同じです。

制御モデルや系統モデルを、どのようにしてインターフェースするかについて、我々はCIGRE IEEE委員会の勧告に従おうとしています。
実際のコードを使用をインターフェイスに定義しようとしていますが、現在進行中です。

要求に合うように、シミュレータのサイズを大きくする必要があります。
電力システムをシミュレータに合わせるのではなく、電力システムに合うようにシミュレータを設計する必要があります。

2021年の状況

  • 高速Co-sim
    • 32/64bitモジュール:32bitPSCADの風力・太陽光モデルは、Windows64bitで実行される電力グリッドモデルと連動
    • MultiOS: Windows / LINUXで実行される64bitグリッドモデル、WindowsDLLと連動するLINUXインターフェースも可能
  • 内挿/外挿によるマルチレートシミュレーションは、効率的かつ正確であることが証明されている
    • グリッドシミュレーションレートに対し、コントローラー(ネイティブまたはPSCAD DLL)ごとに異なる(速く/遅く)レートを設定可能
    • メイングリッドは、コントローラーレートとは異なるレート(例:50 us)でシミュレート可能
    • コントローラレートはメイングリッドレートの整数倍であること
      • (グリッドレートシミュレーションの整数倍ではないコントローラーレートの使用も開発中)
  • 実コードを使用する為、CIGRE / IEEEインターフェイス定義を実装
  • 拡張性:提案ソリューションの拡張性ベンチマークデモ
  • PSCAD、PSSe、EMTP、HYPERSIM間の自動モデル/データインターフェイスは、モデルからモデルへの変換アルゴリズムを含む統合データベースを介して実装


現状の主な課題は、データとモデルの管理で、それらをどのようにインターフェースするかです。
ご存じのように、EMTシミュレーションでは、同じデータベースが使えるスタンダードがありません。
Phasorタイプに於いては、いくつかのスタンダードが開発されていますが、それらは3相EMTシミュレーションに実装できません。
EMTでもPhasorでも使える共通データベースで、お互い対する一種の翻訳ソフトのようなものが必要です。

その為、我々は集中データベースを作ることを決意しました。
Hypersim向けにモデルを生成でき、EMTモードで巨大電力グリッドの並列シミュレーションが可能で、必要であればFPGAコードも生成できるものです。
この同じモデルを使って、Phasorモードで不平衡グリッドの並列シミュレーションを行うことも出来ます。
最大の精度を出す為には、EMTモードとPhasorモードを混在する必要があります。

これらに関しては、何らかの標準技術が今後数年で世の中に出てくると思われます。

しかし データやモデル管理は依然として大きな課題です。
その為 我々の計画には配電におけるdigSILENTのような汎用ソフトやCYMEも含まれています。
Gridlab D(PNNL)やRTDSのRSCADとのインターフェースも想定しています。VESTASのUNIFIEDModelとの連携も考えていますが、これは大きな課題です。



以下に示すのは、この機能の事例で、中国ネットワークです。
中国東部です。そこでは10から20のHVDCリンクを持っており、主な課題は、電力システムの安定性をシミュレートすることです。
多くのインバータが同じ都市内に接続されており、通信障害で電力伝達が完全に止まってしまうリスクがあります。
これはPhasorタイプのツールではシミュレーションが難しく、いわゆるハイブリッドアナログ・デジタルシミュレータを使う必要があります。

この場合は、制御コードを使うのではなく、実コントローラを使っています。
巨大な研究室で制御システムの複製を持っており、そこでオペレータがきちんと判断できるように、完全なグリッドシミュレーションをします。

以下のフルシステムは、CIGRE委員会で作られたHVDCグリッドです。
完全なマルチモジュールインバータシステムで構成され、それぞれのインバータは、数千のスイッチを持っています。
このような複雑なものでも、我々は7プロセッサーで25-50μsecと、リアルタイムシミュレーションより高速でシミュレートできます。
必要に応じてモデルをスケールアップ出来る事例です。


もう一つの重要な点は、サイバーフィジカルシステムをシミュレートできることです。
通信システムは、グローバルシステムのセキュリティと安定性で、主要な役割を担っています。
その為、実機コントローラと接続できることが非常に重要です。

それらは制御センターで動作し、通信システムエミュレーションとインターフェースされ、故障やエラー時において、通信システム遅れの影響を確認できます。
これはグローバルシステムの一部となる為、非常に大きな課題です。


デジタルツインが夢物語でなく、ここ数年で達成するための課題についてまとめてみます。
  • 多くの場合で、EMTモデルを使うシミュレーションが必要で、Phasorモデルと接続されている必要があります。
  • 現状、社内やクラウド上のHPCは、EMTシミュレーションを使うデジタルツイン実装の手ごろなソリューションとなります。
    プロセッサーの追加コストは時間がたつにつれ下がっていく為、問題はもはやコンピュータそのものでなく、シミュレーション効率を上げる方法となります。
  • 実製品コードを導入し、全てのデータとモデルをフィールドにあるものと同期する方法が必要です。
    そこで得た結果を、5-10分以内にオペレータだけでなく、計画研究にも伝える必要があります。
  • 設計だけではなく、設計のテストをどのようにするかを、考える必要があります。
    この場合は限界があり、テストが出来るように、システム全体の複雑さを簡略化する必要がありそうです。
    テスト設計は課題のひとつで、何をどうやってテストするか 仕様が正しいことをどうやってテストするかが問われます。


これら以外にも、今後何年間で開発をしていかなければならないことがまだたくさんあります。
  • デジタルツインを初期条件に自動的に適合させ、状態推定に接続する方法
  • コントローラのバージョンをどうやって取得し モデルパラメータ検証をどうするかという方法 
  • フィールドでの変更に対し、モデルが現実に対応していることを検証する方法
  • システム全体の分析に役立つAIベースツールを使用して、優れたテストシナリオを実装する方法
  • モデルをより適切に管理する方法 等など

我々はこれらのプロジェクトで、多くの専門家と協業していきたいと思っております。


まとめ

  • パワエレベース発電システムが大量統合された電力網の、電力伝達力および安定性を評価するには、完全なEMTシミュレーションが必要になる場合がある。
  • 社内やクラウドベースのHPCは、EMTシミュレーションで正確な電力グリッドデジタルツインが実装できる手頃なソリューションを提供できるようになった。
    • グリッドの正確な仮想表現で、多数の不測事態下における「ふるまい」の理解と予測が可能
    • エミュレートされた制御システムを、実際の製品コードと統合
    • グリッドの障害が発生した場合、平常に戻る機能を予測して、システムオペレーターを5?10分間隔でリアルタイム支援
  • モデル間およびシミュレーションツールのインターフェイスは、統合データベースを通じて開発
  • システムオペレータが使用できる完全なソリューション提供には、なお作業が必要
    • デジタルツイン初期条件を、実際のシステム状態および動作条件に自動適合(状態推定機能との接続)
    • モデルパラメータの有効性を自動的にテスト
    • 不測事態分析のAIベースツールを実装?テスト管理、結果分析
    • モデル・データ管理


デジタルツイン連載


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